離婚の慰謝料は「離婚原因慰謝料」と「離婚自体慰謝料」の2つから構成され、その合計額で算出されます。
慰謝料と一口に言っても、なぜ離婚をして何に対して慰謝料を請求するのかで金額は大きく変わっていくのです。
慰謝料の計算には様々な要素が絡んできますが、その名の通り、「精神的な苦痛の度合い」に対する賠償のことですから、苦痛の程度や回数、期間などが大きく関わってきます。
この他にも有責性、結婚期間、有責者の悪意、性別、年齢、有責者の社会的な立場なども金額に左右する要素です。
それらを合計して算出されるのが慰謝料であり、計算方法は存在します。
しかし、実際の判例では相場から金額を算出することが多く、計算方法にはこだわっていないと判断されます。
やはりケースバイケースといえるため、計算方法はおさえながらも、相場による算出を求めていきましょう。
1 離婚慰謝料は2つの慰謝料の合計で計算する!
離婚慰謝料は「離婚原因慰謝料」と「離婚自体慰謝料」を合わせたものです。
①離婚原因慰謝料
離婚に至る原因を作ったことに対する賠償のことであり、不倫や暴力、悪意の遺棄などが挙げられます。
不倫(不貞行為)による離婚は裁判上の離婚理由に該当するため、明らかに離婚の原因であり、そのことに対する慰謝料という考え方。
浮気した夫に対して離婚に際し慰謝料を請求するということです。
②離婚自体慰謝料
離婚をすることでその後に受ける精神的なダメージや負担に対する賠償のことを指します。
離婚したことで、一人の生活になってかかってくる負担は経済的なものから肉体的・精神的なものまでありますが、これに対する賠償を求めるということ。
一般的に言う「慰謝料」とはこの2つを合わせた合計金額のことを指します。
それぞれについて算出の目安がありますので見ていきましょう。
①離婚原因慰謝料
これについては計算方法というよりは相場で見ていくというのが一般的です。
・配偶者の不貞が原因で離婚する:100~500万円
・DVモラハラが原因で離婚する : 50~500万円
・悪意の遺棄が原因で離婚する : 50~300万円
・セックスレスが原因で離婚する: 100万円程度
すべてにおいて算出のポイントになる一番の項目は「支払う側の年収」と「結婚期間」です。
そもそも慰謝料を支払う側の収入がなければ支払いを求めることもできませんが、相手の年収が高ければ高いほど高額な慰謝料を請求できます。
そして、結婚期間はそのまま精神的な賠償の裏付けといえるでしょう。
結婚期間が長いということは、それだけ配偶者との信頼関係があったことの証であり、それを裏切られたという精神的なダメージを表します。
よって、この2つを勘案して出されたのが上記の相場となり、これは裁判でも参考にされるものなので、計算方法ではなく相場としてとらえるべきです。
②離婚自体慰謝料
これは離婚をしたことで受ける精神的な賠償のことですが、具体的な計算式は以下のとおり。
「基本慰謝料120万」+「相手の年収の3%」×「実質的婚姻年数」×「有責度」×「調整係数」で表します。
ここでポイントになるのが「有責度」「調整係数」でしょう。
まずは有責度ですが、相手にどのくらいの責任があるかを数値で表したものです。
・相手の一方的な不貞行為(不倫相手とのセックス)=1
・悪意の遺棄(生活費を渡さないなど)=0.8
・3年以上の生死不明=0.7
・回復の見込みのない強度の精神病=0.7
・その他、婚姻を継続しがたい重大な事由(DV、浪費、犯罪、性格の不一致、セックスレスなど)=0.7
調整係数は以下のとおり。
・職があり、パートナーと同程度の収入を得ている=0.7
・職はあるがパートナーの収入よりも額が劣る=0.9
・職はないがこれから職に就くあてがある=1.1
・職はなくこれまで職業経験がない=1.3
これらを計算式に当てはめてみましょう。
基本慰藉料120万円+相手の年収(500万円×0.3=15万円)×婚姻年数(5年)×有責度1×調整係数1.1=202.5万円
ということになり、これが離婚自体慰謝料の金額になります。
慰謝料とは①+②の合計ですから、仮に不貞行為が原因で慰謝料を請求するとなると、相手の年収が500万円とすると250万円といったところでしょうか。
それに②の合計202.5万をプラスすると、およそ450万円が慰謝料ということになります。
①配偶者の不貞が原因で離婚する:100~500万円の相場から年収500万円で婚姻期間5年で算出して=「250万円」
②基本慰藉料120万円+相手の年収(500万円×0.3=15万円)×婚姻年数(5年)×有責度1×調整係数1.1=「202.5万円」
③離婚慰謝料(離婚原因慰謝料+離婚自体慰謝料)=合計450.5万円という計算式が成り立ちます。
引用元: http://shiga-rikon.jp/chishiki/bunyo
2 実際の慰謝料はどれくらいになるのか?
これまでで記載したとおり、慰謝料には「婚姻期間」「相手方の年収」のほかさまざまな要素が絡んで算出されることがわかりました。
では、上記に示したとおりに慰謝料が計算されるのか?
答えは「NO」で、現実的には計算どおりにはならず、金額にはバラつきがあるというのが実情です。
・結婚期間が7年の夫婦で、離婚の理由は夫の不倫によるもの。妻は夫に対して慰謝料を請求したところ、440万円の支払いが命じられたという判例があります。
夫の年収が割と高いと判断されるケースで、相場といわれる500万円上限に迫る金額が出ています。
あくまで推測ですが、ここで勘案されるケースといえば、7年にわたって夫がずっと浮気を隠しながら相手と一緒に時間を過ごしてきたこと。
家事や育児はほとんど妻に任せきりで、家庭を顧みなかったなどの理由があるでしょう。
また、妻は夫の浮気が原因で精神的に病んでしまった可能性も否定できません。
こうした様々な可能性を考えると、やはり計算式どおりの金額ではないと判断できます。
・結婚期間が30年の夫婦で、離婚理由は夫の不倫によるもの。妻は夫に対して慰謝料を請求したものの、300万円程度しか支払いが命じられなかったという判例があります。
上記の例と比較してみるとハッキリ違いがわかりますが、結婚期間が30年ということは、それだけ長い期間お互いの信頼関係があったことでしょう。
にも関わらず、その信頼を裏切られた妻側に支払われるのは結婚期間7年の夫婦よりも少ない300万円。
やはり、ここでも慰謝料の算出に様々な要素が絡んでいることがわかるでしょう。
結婚年数が30年という長きに渡りながら慰謝料がわずか300万円ということは、夫の年収が極端に少なかったことも推測されます。
または、浮気をしていた期間が極端に短いなども慰謝料算出に考慮された可能性があります。
440万円の支払いを命じたケースを考えれば、浮気をしていた期間が結婚年数と同年と考えることもできます。
結婚してから浮気が始まり、その間奥さんはずっと夫を信じて支え続けていたと考えたらどうでしょう?
その精神的なダメージは計り知れず、上限に迫る金額が算出されてもおかしくありません。
一方で300万円のケースは浮気の期間が1年ほどとしたらどうでしょうか?
30年連れ添った夫婦でしたが、たった1度の浮気が1年ほど続いてしまい離婚に至ったとなれば、30年ずっと浮気していたわけではないため、妻に与えたダメージは結婚年数と比例せず考慮される可能性があります。
このように、判例では額面どおりの計算式が当てはめられることはほとんどなく、夫婦や離婚の形態によって決められていることがわかります。
慰謝料の計算式は存在はしますが、判例ではそれを基に慰謝料が決められるわけではなく、式を基調としながらも条件によって金額が上下するといえるでしょう。
引用元: https://www.riconhiroba.com/lawer/divorce-lawyer-alimony.html
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